ウランバートルからアルヴァイヘールへ From Ulaanbaatar to Arvaykheer
ウランバートルからほぼ南西に向かって車を走らせます。この道路は西の地域へ行く重要な幹線道路なのでよく整備されています。途中、ゲルを訪問したりして、割とゆっくりとしたペースで約440km を走ってアルヴァイヘール Arvaykheerに到着しました。 この街は人口は25,000人程度ですが、この地域では最大の県庁所在地です。ソ連時代には部隊の司令部が置かれていたそうで、当時のいかにもソ連らしいモニュメントが残されています。ここで1泊しましたが、おいしいボーズを食べることが出来ました。
寄り道をして乗馬体験 |
Arvaykheevのモニュメント |
アルヴァイヘールからの植物調査 Plants investigation from Arvaykheer
アルヴァイヘールからはアルタイ山脈とハンガイ山脈に挟まれた平原を西に進むことになります。路程は下の地図のとおりです。
ここを通る道路も西へ向かう幹線となるため舗装された良い道で、ドライブは快適でした。ハンガイ山脈からの豊富な水によって潤っているせいか、緑が美しい草原が広がり、羊が放牧されています。ゴビ砂漠の近くとは違って砂ばかりの 光景はもう見られなくなりました。ただ、所々に堆積岩の巨大な山が見られました。
バヤンホンゴル Bayankhongor
バヤンホンゴルはバヤンホンゴル県の県庁所在地で、人口は26,000人(2006年データ)です。ハンガイ山脈から流れ出るトゥイン川(Tuyn gol)に潤されているので、農業も行われています。町の東にある小高い丘に登ると整然とした町並みを 見渡すことができました。南から西にかけては草原が、北側には山が迫っているのがよくわかりました。この展望台では日本の農林水産省野菜試験場に研修に行っていた農業指導者の方と偶然に会いました。世界は狭いです。
バヤンホンゴルのErdenemandal Khairkhanからの展望 |
バヤンホンゴルからチャンドマニへ From Bayankhongor to Chandmani
バヤンホンゴルからは幹線道路から外れてチャンドマニへ向かいます。草原地帯で放牧をしている遊牧民達に時折出会います。道路は例によってよくわからない車のわだちが頼りなのですが、砂地の平地なので割と快適でした。ただ、バイドゥラグ川 (Baydrag gol)が増水しており、橋のある所まで行くのはかなりの回り道になるので、川で遊んでいた子供を車に乗せて浅瀬を教えてもらって強行突破しました。
テレビのアンテナを備えたゲル。ここの女の子は冬の食用に塩漬けにするためにネギ(Allium mongolicum)の葉を集めていました。 |
Baydrag河畔で草を食む馬たち。この川の浅瀬を車で渡りました。 |
道中でもう一つハプニングが。泥の中に車が突っ込み、前が見えないくらいドロドロになりました。ちょうど井戸があったのでそこを借りて車を洗い始めたら、水をほしがってものすごい数の羊がやってきてあっという間に取り囲まれてしまいました。
この日と次の日は少し南に下り、アルタイ山脈の麓にあるチャンドマニ(Chandmani)で野営をしました。標高は2,000m を越える場所でしたが、周囲は砂地で美しい草原でした。
キャンプ地点からさらに南に行き、標高が3,000m を越えるツァスト山(Tsast uul)とアラグ・ハイハン山(Alag Khaykhan uul)の間の谷を標高2,800m あたりまで登りました。
砂と同じ模様の小さなかわいらしいトカゲ |
野生ヒツジ、アルガリ種の頭蓋骨 |
この日の食事はゲルでホルホグをごちそうになりました。太陽光発電、テレビ完備のゲルでした。
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チャンドマニからビゲルへ From Chandmani to Biger
さらに西へ進みビゲル Biger を目指します。途中できれいな小川があり、モンゴル人メンバーは川に入って行水を始めたので真似をして靴を脱いで入ってみました。川の水は切れるような冷たさで、 1分も入っていられないくらいでした。そこで、川をまたいで頭だけを洗いましたが、数日間はシャワーにもかかっていなかったのですっきりしました。
ビゲルの手前に古い僧院の廃墟がありました。ノーミン・ハーン(Nomin Khan)僧院で、750年前に建てられたものだそうです。当時は500人もの僧侶が暮らしていましたが、 今はかろうじて崩れずに残った外壁が見られるだけです。少し山側に入ると、山裾まで放牧が行われていました。夏の間は標高の高いところで放牧を行うのだそうです。
Nomin Khan 僧院の廃墟 |
ラクダの放牧 |
ビゲル(Biger)は小さな村です。中心部に広場があり、その近くの使われていない兵舎のような建物を借りることが出来ました。ホテルと違い、電気も水もありませんが、テントを造営する手間は省けました。
ビゲールの中心にある広場。この銅像がどのような人物なのかはわかりません。測候所があり、衛星通信用のアンテナが立てられていました。 |
村の雑貨屋さんの前で。鄙にはまれな美人姉妹が店番をしていました。 |
ビゲルの西にある標高3,765m のブルハン・ブーダイ山(Burkhan Buuday uul)とトゴル・ハイルハン山(Togol Khayrkhan uul)の間の谷、シャール・ブルギーン(Shar Bulgiin)が最後の調査地点となりました。 右側、つまり北側の斜面は比較的なだらかでしたが、左側はかなり傾斜がきつく、ガレ場になっているのでずり落ちそうで、立っているのもままならないくらいでした。ですから、ここでの植物の採取と写真撮影は大変でした。標高2,800m まで登りましたが、 さすがに息苦しく、数歩登っては休むという有様でした。でもその地点からの眺望は素晴らしく、異次元の世界のように感じられました。
広い谷間を登っていきます。途中から右側の山腹を登ると大きなオボーがありました。見晴らしが良く、 携帯電話の電波が届くので皆一斉に電話をかけ始めました。試しに日本へかけてみたら普通につながりました。 |
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放牧されているヒツジは夜の間はこのような囲いの中に入っています。 |
Burkhan Buuday 山側の斜面 |
標高2,800m 地点で。現地の人は平気で立っていますが、実は足場の悪い急斜面 |
標高3,765m のBurkhan Buuday 山を望む |
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ゴビ・アルタイ西部の植物 Plants in western region of Govi-Altayn
過酷な環境を生き延びるネギ属 Allium species living in severe environment
モンゴル全土に分布するネギ属の植物はこの地域にも数多く生息しています。ただ、比較的雨が降る中・北部と異なり、この地域の年間降水量は50~100mm程度と極度に乾燥しています。また、夏は40℃にもなることもありますが、冬はマイナス20~30℃で、 Allium altaicumが生育すする標高2,000m を越える地域ではマイナス50℃も珍しくないそうです。そんな過酷な環境下で生育するネギ達は夏には華麗な花を咲かせます。
ネギ属の中で砂漠地帯での圧倒的な優占種はA. mongolicum とA. polyrhizum です。2種ともモンゴル全土の乾燥した 草原地帯で見られますが、ゴビ砂漠での群落は見事です。 花の色以外、形態は似通っており、場所によってはこの2種が混合して群落を形成している場合もありました。 |
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Allium mongolicum |
Allium polyrhizum |
A. mongolicum とA. polyrhizum の混合群落(Chandmani付近 北緯 45º 27’ 52” 東経 97º 40’ 45” 標高 2059 m
砂漠ではこの2種の他、名称がわからない同じような小型のネギ属植物を見かけました。
比較的緑が多い草原で見かけたAlium splendens です。
山の傾斜地ではAllium altaicum の小さな群落をあちこちでみかけました。相変わらず、非常に厳しい土壌条件の中で育っています。この写真はいずれも標高2,800m を越える場所で撮影しました。
過酷な環境で生きていくために、ネギ達は彼らなりの工夫をしています。
いずれのネギ属植物も冬の間は地上部(葉)は枯れてしまいますが、地下部だけは生き残って翌春まで持ちこたえます。一番左のA. altaicum は小さな球根を 形成して、 極度の乾燥と寒さに耐えています。中央と右は砂漠地帯に生えている小型のネギです。中央のネギのように枯れた葉鞘を脱落させずに保って、襟巻き状態にして直接寒気にさらされないようにしています。右のネギは塊根(tuber)の様に 根を太らせ、しかも細かい毛で覆って寒さ対策をしています。 |
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この地域のその他の植物 Other plants in this area
この二つの植物は両方ともケシ科に属し、左側はPapaver nudicaule (アイスランドポピー)、右側はHypecoum lactiflorum |
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モンゴル全土でよく見られるデルフィニウム(Delphinium grandiflorum) ですが、ここの株は花色も濃く、着花数も多くて立派でした。 このままでもすぐに園芸品種になりそうです。 |
バラ科クロバナロウゲ属の Comarum salesovianu。モンゴルではアルタイ山脈のみに分布しているとされています。 |
セイヨウウスユキソウ(エーデルワイス) 余りにも立派すぎてかわいさ半減です。 |
シソ科のPanzeria lanata |
Cancrinia discoidea (左)とArnebia guttata (右) いずれもゴビ・アルタイ山脈地域にのみ分布する種です。 |
Oxytropis bungei マメ科の植物で、アルタイ山脈にのみ分布する種です。標高2,800m を越える山の斜面に生えていました。 |
Taraxacum dealbatum タンポポの仲間です。総苞片が反り返っていないところは日本の在来種、ニホンタンポポと同じです。 |
この他にも名前はわからないのですが、可憐な花を咲かせる植物はいっぱいありました。
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