テレルジ Terelj
テレルジはウランバートルの西、60kmくらいの所にある国立公園です。ここには大規模なツーリストキャンプがあります。テレルジに入る手前には大きなオボーがあり、ここから下を流れるテレルジ川を望むことが出来ます。 テレルジ川に架かる橋を渡って入っていくと、広い河川敷には牛や馬が放牧されているのどかな風景が広がります。 2007年に始めて訪れた時はまだツーリストキャンプの数も少なく、かなり静かでした。それが年々キャンプの数も増え、ウランバートルから近いと言うこともあって賑やかになってきました。
テレルジの入り口にあるオボー |
テレルジ川を望む |
テレルジ川 |
テレルジ川からさらに緩やかな丘陵地を登っていくと、ツーリストキャンプが点在する地域に入っていきます。モンゴル高原は4億数千年前に海底から隆起し、その後河川によって浸食されて多様な地形を生み出しました。ここではその一端を見ることが出来ます。 テレルジの標高は1,500m 程度ですが、遠くには標高が2,500m を越える山並みが見えます。
2007年9月(左)と7月(右)に撮影したテレルジ |
テレルジのツーリストキャンプ
2009年の調査旅行の後、初めてここのツーリストキャンプに泊まりました。共同研究者でモンゴル科学アカデミーの植物園におられた Enkhtuya 先生の幼なじみのイミナさんが経営されている
ツェベグマー・ツーリストキャンプ でした。行ってからわかったのですが、イミナさんは司馬遼太郎の「草原の記」に登場するバルダンギン・ツェベクマーさんの娘さんでした。
バルダンギンさんは2004年に亡くなっておられ、キャンプの敷地内にはテレルジにあった別荘を再現した建物もありました。そこは来訪者に公開されており、ツェベグマーさんの写真をはじめ、数々のゆかりの品が展示されていますが、それを見ながらエンフツーヤ先生と
イミナさんが涙してられたのが印象的でした。
キャンプでは日本語の通訳の方も呼んでいただき、大歓迎をしてもらいました。この年の1週間にわたる調査旅行はホテル泊まりもありましたがほとんどが野営だったのでかなり疲れていましたが、ここではゆっくりと一夜を過ごすことが出来ました。
ツェベグマー・ツーリストキャンプ。正面(左)と早朝の裏山から見降ろしたキャンプ。 |
京都学園大学のモンゴル・フィールドワークでは、ツェベグマー・ツーリストキャンプのすぐ隣にあるブンバン・ツーリストキャンプに泊まりました。ここは交流提携大学であるイフ・ザサグ大学が経営するキャンプです。観光用ゲルの作りは本物と同じで、 中央にストーブがあり壁に沿って置かれたベッドで寝ます。もちろん風で飛ばされたりしないように土台はコンクリートでしっかり固定されています。フェルトで囲まれた室内の断熱性は良く、8月末のテレルジの夜は数度にまで下がるのですがストーブを燃やしてもらうと 暑いくらいになりました。大きなゲルの形をした建物がレストランになっており、夜には民族音楽のコンサートもありました。運営は観光関連学部の学生さんがスタッフとして加わっています。
Bumban Tourist Camp |
かわいいお出迎え |
観光ゲル |
レストランでの昼食 |
このキャンプの後ろの山を30分ほど登ったところに小さな洞窟があります。ここには先史時代の壁画が残されており、太古の時代からヒトが住み着いていたことがうかがわれます。
子供を連れた山羊。ウンチをしています。 |
立派な角を持った鹿 |
鹿 |
狼に襲われる山羊 |
乗馬した人と狼の戦い |
鹿を狩る |
亀岩とアリャパラ寺院 Aryapala Meditation Center
テレルジ・ロードをさらに奥に入り、未舗装の道路に入るとすぐに巨大な亀岩が目に入ります。恐らく浸食によって取り残された岩だと思われますが、確かに横から見ると亀そっくりです。この岩には裏側から登ることができ、岩の隙間から覗くことができます。 ちょうど、首の付け根あたりです。
亀岩からさらに未舗装の細い道を奥に行くとアリャパラ寺院があります。ここは「瞑想センター」になっており、山の上の寺院と麓にある僧坊からなっています。きらびやかな山門を入ると、境内は草原の中のなだらかな登りになります。一番高いところにある寺院へは 急な階段を登らなければなりません。でも寺院のテラスからの眺望はすばらしく、氷河によって削られたU字谷を見下ろすことができます。
山 門 |
岸壁に書かれた文字 |
本堂への上り階段 |
本堂のテラスからの眺望 |
本 堂 |
本堂の内部 |
横にある小さな堂宇 |
堂の中 |
チンギス・ハーン像テーマパーク
テレルジからウランバートルへ戻る前にウランバートルとは逆の方向へ18kmほど行くと巨大な銀色のチンギス・ハーンの像が見えてきます。高さ12m、直径30m の建物を台座として鎮座する像は40m の高さがあります。エレベーターで馬の頭の部分にある 展望台にも登ることも出来ます。2007年に初めて連れて行ってもらった時は草原のど真ん中にぽつんと巨大な像が建っているだけでしたが、2018年に最後に訪れた時は従者の像などが増えていました。ここのチンギス・ハーンは遙か東をにらんでいますが、 日本まで行きたかったのでしょうか。
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テレルジの植物
2007年に初めてテレルジを訪れた際にモンゴル国立農科大学植物保護研究所(Institute of Plant Protection ) の Buyanchimeg 先生に近くの山を案内してもらい、野生植物を見ることが出来ました。その中で一番印象的だったのが ネギの仲間の Allium altaicum です。このネギは日本で栽培されている葉ネギの先祖と言われています。モンゴル全土の標高2,000m以上の山地に自生しており、現地では「山のネギ」と呼ばれています。テレルジで初めて見たこの植物は、 土がほとんど無い岩の割れ目にはさまったように根を下ろした小さな球根から葉を伸ばしていました。ヒトがとても近づけないような岩の上にも生えていました。モンゴルでの標高2,000m 以上の高地では冬はマイナス40~50度にもなり、また岩石の多い土壌という 水や栄養分に乏しい過酷な環境で生息できる能力には驚きです。許可を得て種子を持ち帰って福井で栽培しましたが、何の手入れもしないのに病気にもかからずよく育ちました。貴重な遺伝資源です。2008年からの共同研究ではこの植物に注目して、 遺伝子レベルでの地域間変異があるかどうかを、モンゴル全土からサンプルを採集して調査しました。
テレルジではこの他にも興味深い野生植物を多数見ることが出来ました。まず、ネギの仲間です。モンゴル高原はネギ属植物の宝庫で、40種以上が自生するとされており、この写真の植物はモンゴルのあちこちで見かけました。
Allium anisopodium |
Allium tenessimu |
Allium senescence |
Allium bidentatum |
調査をした7月は色んな花が咲き誇っていました。ちょうど日本の高山植物のような感じです。
Iris halophilia |
Lilium pumilum |
Astragalus absurgens |
Aster alpinu アスターの祖先 |
Melilotus dentus |
Vicia alpestris |
Papaver nudicaule シベリアヒナゲシ ヒナゲシ園芸種であるアイスランドポピーの祖先 |
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Atenaria capillaris |
Dasiphora sp. |
Chamerion angustifolium ヤナギラン |
Delphiniumu grandiflorum デルフィニウムの祖先 |
Gentiana sp. リンドウの仲間 |
Potentilla fruticosa |
Cirsium sp. アザミの仲間 |
Leontopodium alpinum セイヨウウスユキソウ(エーデルワイス) |
Melilotus dahurica |
Scabiosa comosa マツムシソウ |
Orostachys thyrsiflora |
Polygonatum sp. ナルコユリの仲間 |
Gentiana sp. リンドウの仲間 |
Pulsatilla dahurica |
Phloms tuberosa |
Thymus asiaticus タイムの仲間。香りが良い。 |
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