マンズシール Manzushir
ウランバートルの南にボグド・ハン山(Bogd Han Uul)と呼ばれる山塊があります。マンズシールはその山の南側、つまりウランバートルの反対側にあります。ここには18世紀に建てられた僧院がありました。最盛期には20の寺院に1000人の僧侶が居住していた そうです。社会主義時代、1937年に全ての寺院は破壊され、今は廃墟が残っているだけです。2009年頃から少しずつ再建の動きがあるそうです。また、ボグド・ハン山は神聖な場所として保護されてきたことから自然環境は良く保存されており、またウランバートル から車で2時間もかからないことから多くの人がハイキングに訪れています。
石碑と奥には再建された建物 |
八正道のシンボルである法輪が彫られた石碑 |
ぽつんと取り残された石像 |
巡礼者に振る舞う食事を調理したという大釜。チベット文字が書かれている。 |
マンズシールの植物
ここは保護地域になっており、自然はほぼ手つかずの状態で残っています。恐らく、大切な大規模寺院の周囲と言うことで聖域扱いになっていたのでは無いかと思われます。 地形的・生態的にはなだらかな傾斜と比較的急な傾斜が入り交じった草原地帯と、ヒマラヤスギを中心とした針葉樹と広葉雑木からなる森林が入り交じって存在しています。従って、ここでは草原性の植物と森林性の植物を両方見ることが出来ました。
Allium altaicum |
Allium sp. ネギの仲間ですが、名前は不明 |
Allium sp. ネギの仲間ですが、これも名前は不明 |
Bupleurum bicaule |
Dianthus sp. カワラナデシコの仲間 |
Cymbaria dahurica キヌゲソウ |
デルフィニウム Delphinium grandiflorum |
オオタカネバラ Rosa acicularis |
名称不明 |
Veronica incana |
Veronica の仲間?名称不明です。 |
Saussurea salicifolia アザミの仲間 |
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シルベ Selbe
ウランバートルの北にあるシルベは川沿いの小さなリゾート地です。特に目立った建物などはありませんが、ウランバートルから20kmと言う近さなので、小学校とかの遠足で 来るそうです。ここに流れている川はシルベ川と合流してウランバートルを南北に横切ります。谷はそれほど狭くなく、草原になっており、お花畑状態です。脇の谷筋に少し入ると森林です。従って、ここも森林性と草原性の植物を見ることが 出来ました。標高は1,700m程度ですが、谷筋のガレ場ではAllium altaicum も自生していました。 |
シルベの植物
Throllus asiaticus |
Dianthus sp. カワラナデシコの仲間 |
Campanula属 キキョウの仲間 | |
Aconitum sp. トリカブトの仲間 |
Linum baicarense アマの仲間 |
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ホスタイ Khustai
ホスタイはウランバートルから100kmほど西へ行ったところに広がる草原の国立公園です。標高は1,200m ですからウランバートルと余り変わりません。緩やかな丘陵地帯で、土壌はかなり乾燥した砂質です。草原に到着して車から降りて驚きました。 一面、Allium ramosum の花で埋め尽くされています。もちろん、周りの空気はネギの香りで満ちていました。この植物はニラ(Allium tuberosum)の祖先種と考えられており、数千年前に栽培化され、日本にも「古事記」の時代に すでに持ち込まれていたらしいです。
ホスタイは野生の馬、モウコノウマが保護されていることでも有名です。モンゴル語でタヒと呼ばれる馬の原種はかつてユーラシア大陸各地に生息していましたが乱獲によって19世紀までに絶滅したと考えられていました。しかしその後、モンゴルでの生息が
確認されましたが、1950年頃までに食肉用に捕獲され、食べられてしまったそうです。しかし、欧米の動物園で飼育されていることがわかり、1980年代にその子孫がモンゴルに逆輸入されてホスタイに放たれています。
野生動植物が手厚く保全されていることから、ここを訪れる観光客も多く、レストランや宿泊設備も整えられています。
草原で草を食むモウコノウマ(タヒ) |
ホスタイのレストランの昼食。羊肉の煮込み。 |
ホスタイの植物
ここでは多くの草原性の植物を見ることが出来ました。もちろんネギ属も多く見られましたが、名前のわからないものも多かったです。
ネギ属の中ではこのAllium ramosum が圧倒的優占種です。広大な面積一面に咲く花は見事です。 |
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この2株のネギ属植物の花はよく似ているのですが、少し違うようにも見えます。Allium anisopodium に似ていますが、どちらが該当するのでしょか。 |
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Allium bidentatum |
Allium leucocephalum |
野生植物の宝庫と言うだけあって、見たことも無いような植物が多かったです。砂地なので乾燥地の植物もよく見られました。
日本にも広く分布するカワラナデシコの仲間(Dianthus 属)はモンゴルにも多く見られます。この二株は別種なのか変異株なのかはよくわかりません。 |
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この二つのマメ科植物はよく似ていますが、左はOxytropis glandulosa で、右はVicia costata です。 |
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Aster alpinus アスター園芸種の祖先 |
よく見かけましたが名前はわかりません |
Phlomis tuberosaセージの仲間 |
名称不明 |
Veronica incana 改良されて園芸種になって、ヴェロニカと呼ばれています。 |
Thymus gobicus T. mongolicum と似ており、乾燥した砂地でよく見られます。 種小名のgobicus はモンゴル語由来で、「乾燥した」と言う意味。料理に使うタイムと同じ仲間で、非常に良い香りがします。 |
Campanula glomerate キキョウの仲間 |
Galium verum セイヨウカワラマツバ |
Rhaponticum carthamoides アザミの1種。甲虫が花にしがみついて花粉を集めに来ています。 |
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