ローマからヴェネチアへ
6月17日の朝、テルミニ駅8時50分発の列車でヴェネチアに向かいます。今回の列車の旅としては一番長い3時間45分の旅になりました。1990年に知人を訪ねた懐かしい Venezia-Mestre に停車した後、
海を渡ってVenezia-Santa Lucia駅に到着しました。ここは不思議な街です。自動車は一切入れず、自転車も禁止。移動は水上バス、ヴァポレット vaporetto と水上タクシーだけです。
狭い街なので歩いてもたいしたことはないのですが、運河の向かい側へ行くには橋が少ないのでかなり歩くことになってしまいます。パトカー、消防車、救急車ももちろん船です。駅に着いて、まず、ヴァポレットの48時間パスを購入します。ヴァポレットの
乗り場(Fermata)は黄色の帯で示されて、名前は読みやすいです。バスと違って停泊するのに手間取るので、なんとものんびりしており、乗り過ごすと言うことはほぼあり得ないので、安心感があります。何よりも水の上をのんびり行って景色を楽しめるので
観光にはうってつけです。もちろん住人は生活のために使っています。1990年に来た時は早朝にサンタ・ルチア駅まで乗った時はほとんどが出勤のサラリーマンだけでした。
ここでのホテルもアパートにしました。ホテルと違い、Google Map には出てこないので、予約サイト(Booking.com)の地図に従ってヴァポレットで近くの桟橋で降りました。そこで指定された電話をかけると、なんと場所が違いました。
幸いすぐ近くだったので、狭い路地を道を聞きながら歩いて到着します。宿泊した Attico vista Canal Grande は16世紀に建てられて修復された
マリピエロ宮(Palazzo Malipiero)の一部で、18世紀に描かれたリトグラフと全く同じです。中はエレベーターもあり近代的で、広くてキッチンには食洗機と洗濯機もありました。何よりも便利だったのはアパートから出たところがサン・サムエレ(San Samuele)
の船着き場だったことです。荷物を置いて、早速ヴァポレットに乗って観光に出かけました。
1日目 サン・マルコ広場と大聖堂~サンタ・マリア・デッラ・サルーテ教会
ヴァポレットでの移動は運河から見た街を楽しむことが出来ます。天気が良く、青空と水の色がよく映えて、建物とマッチしており、見飽きることがありません。
ジウデッカ島のレ・ツィテーレ教会 Le Zitelle en Giudecca |
リアルト橋 Ponte di Rialto |
サンマルコ広場に到着。30年前と比べると船着き場が増え、観光客の数も多くなりましたが、景色には変わりがありません。すぐ向かい側に見えるサン・ジョルジョ・マッジョーレ教会や船着き場から遙かに望むサンタ・マリア・デッラ・サルーテの聖堂が 美しいです。
サン・ジョルジョ・マッジョーレ教会 Chiesa di San Giorgio Maggiore |
船着き場から望むサンタ・マリア・デッラ・サルーテ聖堂 |
船着き場からサン・マルコ広場に入ると、回廊のある建物に囲まれた広場は鐘楼があり、その奥にサン・マルコ寺院(Basilica di San Marco) が控えており、素晴らしい景観です。サン・マルコ寺院は11世紀に建てられたビザンティン建築で、 東ローマ帝国の首都、コンスタンティノープル(今のイスタンブール)にあった聖使徒大聖堂に模して建てられたと言われています。
サン・マルコ寺院では10世紀に作られた宝石で装飾された黄金の衝立などを見ましたが、特に印象的だったのはコンスタンティノープルの職人によって描かれたモザイク画で、特に出口近くの回廊に描かれた旧約聖書を題材にしたモザイク画が最高でした。 同時代のモザイク画を、ラヴェンナやイスタンブールでも見ましたが、ここのモザイク画の華麗さは勝っているように思われました。
サン・マルコ大聖堂の向かって左には15世紀に建てられた「ムーア人の時計塔 Torre del'Orologio」があります。一番上に ムーア人の自動人形が時を告げる鐘を鳴らします。その下にはヴェネツィアのシンボルである翼を持ったライオンの 像があります。時計は青い文字盤を持った天文時計です。向かって右側にはドゥカーレ宮殿(Palazzo Ducale)が聖堂にくっつくように立っています。美しい装飾を施されたこの建物は8世紀から15世紀にかけて建築され、総督の住居であると同時に 行政府の役割も果たしていました。
ムーア人の時計塔 Torre del'Orologio |
ドゥカーレ宮殿 Palazzo Ducale |
サンマルコ広場を後にして、ヴァポレットで向かい側のサンタ・マリア・デッラ・サルーテ教会(Basilica di Santa Maria della Salute)へ行きます。運河のすぐそばに建てられた白い瀟洒なたたづまいの8角形の建物はとても美しいです。 この教会は17世紀の黒死病流行の沈静化を祈って建てられました。主祭壇の上には聖母マリアの像が置かれています。
サンタ・マリア・デッラ・サルーテ教会はヴェネツィア本当の先端にありますが、すぐ隣の小さな島にあるサン・ジョルジョ・マッッジョーレ教会(Chiesa di San Giorgio Maggiore)へ行くことにしてヴァポレットに乗ります。
ところが、乗ったのは逆回りをする船で、大運河をサンタルチア駅の方まで行き、大運河を抜けてジュデッカ島(Giudecca)との間を通って1時間ほどかけてようやくたどり着きました。おかげで、運河沿いの景色を堪能することが出来ました。
この白亜の教会は16世紀に50年ほどかけて建てられました。対岸のサン・マルコ広場から見て一番目立つ美しさですが、近くで見ても夕刻の青空に映えて素晴らしかったです。残念ながら、時間が遅くて中には入れませんでした。教会の横には古い灯台がありました。
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再び対岸のサン・マルコ広場に戻り、そこからは路地を通ってホテルへ戻りました。夕暮れ時、狭い運河にはゴンドラがゆっくりと行き交い、ヴェネツィアならではの風情がありました。
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2日目 ムラーノ島~リアルト市場~サン・ロッコ大信徒会
混雑と暑さを避けて、早朝からムラーノ島(Isola di Murano)へ向かいます。ローマ広場 Piazza le Roma からヴァポレットに乗って30分ほどで到着します。今日も快晴なので、海はとてもきれいです。 ガラス博物館 Museo del Vetro はまだ開館していなかったので、すぐそばのサンタ・マリア・エ・サン・ドナト聖堂へ行きます。この教会は12世紀に建てられたビザンチン様式の建物です。レンガ造りの建物が青空に映えて美しいです。
サンタ・マリア・エ・サン・ドナト聖堂と鐘楼 Duomo dei Santa Maria e San Donato con Campanile |
ガラス博物館はムラーノ島のガラス芸術の変遷を見る上で、非常に興味深かったです。開館と同時に入ったせいか、観光客も少なくてゆっくりと楽しむことが出来ました。 近くにはヴェネツィアン・グラスを売る店がたくさんあり、目の保養になります。
ガラス博物館 |
ヴェネツィアン・グラス店のショーウインドウ |
ヴェネツィア本島に戻り、リアルト市場 Rialto Mercato で下船し、市場へ行きました。ここは魚の市場で有名ですが、到着した12時過ぎにはほとんどの魚屋が閉まっていました。他の店はまだ開いており、色んな野菜や果物を見ることが出来ました。
最近ヨーロッパでよく見かけるトマト品種 |
乾燥トマト |
アパートの近くの食料品店でおかずやワイン、ビールなどを買い込み、部屋で食べました。赤ワインはマルツェミーノ Marzemino。モーツァルトのオペラ、ドンジョバンニの最後の宴会の場面で出てくるワインです。
2日目 サン・ロッコ大信徒会とサン・マルコ寺院鐘楼
昼食後、一休みしてからサン・ロッコ大信徒会(Scuola Grande di San Rocco)へ出かけます。13世紀にイタリア中北部では、一般信徒の集まりである信徒会が数多く結成されました。15世紀のヴェネツィアでは6つの信徒会 が活動を続けましたが、18世紀になって唯一残ったのがサン・ロッコ大信徒会です。建物はサン・ロッコ教会の左隣にあります。ここからはサンタ・マリア・グロリオーザ・デイ・フラーリ聖堂(Basilica di Santa Maria Gloriosa dei Frari)の 後ろ姿も見えます。この信徒会の建物は15世紀に建てられました。1階のサラ・テレーナ Sala Terrena の壁にも多くの絵が掛けられていますが、荘重な大階段を登っていくと豪華なサラ・カピトラーレ(La Sala Capitolare)と呼ばれる大広間があり、 壁面、天井は16世紀のヴェネツィア派の画家ティントレット(Tintoletto) が旧約聖書と新約聖書を題材にして描いた絵画で埋め尽くされており、圧倒されます。
サン・ロッコ教会 |
サンタ・マリア・グロリオーザ・デイ・フラーリ聖堂 |
大階段 |
サラ・カピトラーレ |
サン・マルコ広場とムーア人の時計塔 |
5時にサン・マルコ寺院の鐘楼へ登る予約をしていたので、また広場まで行きます。鐘楼へはエレベーターが付いており一気に96mの塔の上まで行け、
フィレンツェのような苦労はありません。素晴らしいパノラマが広がり、上から見るとヴェネツィアの街の作りがよくわかります。かなりの数の船が行き来している様子もよくわかりました。 ドゥカーレ宮殿 |
サンタ・マリア・デッラ・サルーテ教会。奥にジュデッカ島 |
サン・ジョルジョ・マッッジョーレ島と聖堂 |
2日目 フェニーチェ劇場 Teatro La Fenice di Venezia
ヴェネツィアで忘れてはいけないのはフェニーチェ劇場です。18世紀末に建てられましたが、1836年に火災で焼失します。1年で再建され、ヨーロッパの中でも重要なオペラ劇場になりました。しかし、再び、修復工事中の1996年に工事関係者の 放火という前代未聞の事態で全焼しました。財政的な問題もあり、再建ははかどらず、その間、資金集めのための日本への公演もありました。2003年にようやく再開場しました。
正面の入り口 |
ロビー |
ホール |
ホールの天井 |
この日の公演はモーツァルトの「ドン・ジョヴァンニ」の初日で、指揮はJonathan Webb、演出はイタリア人のDamiano Michielettoでした。ホールの響きはとても良く、聞きやすかったです。特にすごい歌手がいたわけではありませんが 良い演奏でした。ただ、演出が最近ありがちな現代風にアレンジされており、ドン・ジョヴァンニは実は滅びなかった、と言う幕切れにはいささか違和感を覚えました。
オペラが終わった後、すっかり夜も更けた街を歩いて Santa Maria del Gilio の船着き場まで行き、船を待ちました。海を渡ってくる夜風が気持ちよかったです。これで、2日間のヴェネツィア滞在は終わりました。
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