フィレンツェからローマへ
6月14日の朝、8時過ぎの「赤い矢号」の列車に乗り、ほとんど遅れることも無く、約1時間半でローマのテルミニ駅に到着しました。あの映画、「終着駅 Stazione termini」の舞台になった駅で、
戦後すぐの1947年から1951年にかけて建設されたモダニズムの正面部分が残っています。
ホテルは駅のすぐそばの古い建物で、一応クーラーは付いていましたが、極めて冷房能力の低い設備でした。時間が早くてチェックインできないので
荷物を置いて出かけることにします。地下鉄もすぐそばなので非常に便利です。3日間有効なパスを購入しました。
1日目 スペイン広場~トレビの泉~パンテオン
先ずはスペイン広場(Piazza di Spagna)へ向かいます。地下鉄で3駅だけ、すぐに到着です。地上に出ると結構な人出です。名前のとおり船の形をしたバルカッチャの泉(Fontana di Barcaccia)から見上げる スペイン階段とその上の真っ白なトリニタ・デイ・モンティ教会(Chiesa della Trinità dei Monti)は素晴らしいです。1990年に来た時は、階段に腰掛けてオードリー・ヘプバーン気取りでジェラートを食べている人がいっぱいいましたが、 今は広場中での飲食が禁止され、さらに今年(2019年)の7月からは階段に座ることも禁止になったそうです。
ここからトレビの泉(Fontana di Trevi)は歩いてすぐです。ここもすごい人です。1990年にここを訪れた時は工事中で、両側に足場が組まれ、もちろん水は全くないからからの状態でした(右の写真 1990年9月1日撮影→)。水が無いのでコインは
投げ入れませんでしたが、また来ることが出来ました。
ポーリ宮殿(Palazzo Poli)の後ろに作られたこの巨大な噴水は1762年に完成したバロック様式の凱旋門をかたどった建造物です。中央にはポセイドンが2頭の海馬が引く馬車を操っている様子は、やはり水が無いとだめです。
お昼になり、お腹がすいたのでトレヴィの泉からちょっと離れた所で見つけたPizzeriaにはいります。名前はLa Fontana(泉)です。もちろんピッツァ以外も食べられるので、軽く食事をしたい時はこんなスタイルの店が手軽でいいです。 持ち帰りもできます。
ここで、ラザーニャとニョッキを食べました。まずまずのおいしさで、暑さの中、ビールとよく合いました。
午後になるとますます暑くなりますが、日陰を選んで歩いてサンタ・マリア・ソプラ・ミネルヴァ教会(Basilica di Santa Maria sopra Minerva)へ行きました。 13世紀に再建され、15~17世紀にかけて手直しされたゴシック様式の教会です。
中に入ると青い天井に金の星で装飾された天井が印象的でした。
この教会の前には奇妙な像が建っています。「ミネルヴァのひよこ Pulcino della Minerva」と呼ばれるこの像は、エジプトのイシスの神殿から持ち帰った
紀元前6世紀のオベリスクを象が背負っています。ちなみに、ローマ市内にはオベリスクが11本あるそうですが、このオベリスクが一番短いらしいです。これがなぜひよこなのかよくわかりませんが、象の外観から「子豚 porcino」と言うあだ名が付き、それがpulcino、
つまり「小さなひよこ」に変化したと言われています。いずれにしても、キリスト教の教会の前にインド風の大理石の象が置かれているのも奇妙です。
涼しい教会を出ると外はかなりの暑さです。恐らく35度を超えていたと思います。次の目的地はパンテオン(Pantheon)です。元はローマ神の神殿として紀元前に建てられましたが、現存するのは112年から128年にかけて作られたレンガ造りの円形の建物です。 ローマコンクリートの上に積み上げられた厚さ6mのレンガの壁でドームが支えられています。ドームの上には採光の穴が開いており、ラファエルや歴代王の墓がありますが明るい雰囲気です。全面は16本の花崗岩の柱が立っています。 下は16世紀にÉtienne Dupéracによって描かれた絵ですが、今と全く変わりありません。ミケランジェロは「これは人間が作ったのではなくて、天使が作ったのだ」と言ったそうです。
1日目 ナヴォナ広場~ヴァチカン市国へ
一番暑い時間帯になり、熱中症を心配しながらの散策です。途中にある San Luigi del Francesi 協会で涼もうかと思いましたが、残念ながら閉まっている時間帯でした。ナヴォーナ広場には3つの噴水があります。 細長い広場の両端にネプチューンの噴水とムーア人の噴水があります。中央には四大河川、ナイル川、ガンジス川、ドナウ川、ラプラタ川を擬人化してバロック時代にジャン・ロレンツォ・ベルニーニ (Gian Lorenzo Bernini)によって作られた彫像で飾られた 噴水があります。オベリスクが中央に建っており、なかなか壮大な噴水です。その噴水の前にサンタニェーゼ・イン・アゴーネ教会(Chiesa Sant'Agnese in Agone )があります。
ネプチューンの噴水 |
ムーア人の噴水 |
四大河川の噴水 |
四大河川の噴水とサンタニェス・イン・アゴネ教会 |
サンタニェーゼ・イン・アゴーネ教会は17世紀に建築されたバロック様式の教会です。内部は豪華な大理石作りで、主祭壇の後ろにはDomenico Guidiによる巨大な聖家族のレリーフがあります。
ナヴォーナ広場からしばらく歩くとテベレ川に出ます。ヴィットリオ・エマヌエーレ橋を渡って広いコンチリアツィオーネ通り(via della Conciliazione)に出ると、正面にサン・ピエトロ大聖堂(Basilica di San Pietro)が見えます。 サンピエトロ広場に入るとそこはもうイタリアではなく、ヴァチカン市国です。世界の12億を超すカトリック教徒の総本山である独立国家であると思うと、感慨深いものがあります。その中心となるのが世界最大級のキリスト教施設である サン・ピエトロ大聖堂です。
サン・ピエトロ大聖堂 |
大聖堂から見たサン・ピエトロ広場 |
サン・ピエトロ大聖堂のある場所は、もともとイエス・キリストの使徒、ピエトロの墓所(ネクロポリス)であるとされています。 |
大聖堂を出たあたりに、スイス傭兵が直立不動の姿で立っていました。バチカン市国の警備を担うのはこのスイス傭兵だけです。16世紀の神聖ローマ皇帝軍によるのローマ略奪の際に、スイス傭兵が教皇クレメンス7世の避難を助けたと言うことを世界史で習った
ことを思い出しました。派手な制服はミケランジェロのデザインとか言われていますが、現在の制服は1914年に制定されたものだそうです。
夕方の6時頃になるとまだ日は高いのですが、日中の暑さも和らぎ始め、広いサン・ピエトロ広場の
観光客の数も減り、ようやく静かな雰囲気になっていました。サンタンジョロ城までぶらぶら歩いて行き、そこからバスに乗ってホテルへ戻りました。
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2日目 ヴァチカン美術館とサンタンジェロ城
朝一番に予約してあったバチカン美術館(Musei Vaticani)へ8時に行きます。並ばずに入れるというツアーだったのですが、同じような団体がたくさんあるので結局入場までにかなり並びました。この美術館は16世紀末に建てられた
世界でも有数の規模を持つ美術館で、歴代教皇が収集した美術品が展示されています。
まず、絵画館(Pinacoteca)へ行きますが、さすがに朝一番なので人が少なくてゆっくり楽しめました。
楽器を奏でる天使達を描いたフレスコ画 |
絵画は中世からルネッサンス期の宗教画が数多く収納されています。特に、ラファエロ、レオナルド・ダヴィンチ、カルバッジョ、ジョットの素晴らしい絵画が印象に残りました。また、古いタピストリーもありました。
絵画館から長い回廊を通って教皇の間へと移動しますが、すごい数の観光客で繁華街のようです。もちろん一方通行で、逆戻りは出来ません。
回廊の天井は金で装飾されており、また壁には大きな古地図が掲げられています。教皇の間はフレスコ画によって装飾されており、特にラファエルの間は見応えがありました。 |
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2日目 サンタンジェロ城 Castel Sant'Angelo
ヴァチカン美術館を出て、少し外れた場所にある小さなBarを見つけ、昼食にします。なぜかAmerican Barと言う名前ですがパスタを食べました。
サンタンジェロ城までは歩いてすぐです。この城は135年にローマの「七賢帝」の一人、アドリアヌス帝の家族の住居として建てられました。その後、レンガ造りの城壁が巡らされて要塞としての機能を持つようになります。プッチーニのオペラ
「トスカ」の舞台となり、幕切れでトスカはこの城壁から飛び降ります。一番高いところまで登ると、足下にテーベ川が流れています。サン・ピエトロ大聖堂もすぐ近くです。
サンタンジェロ橋から見た城 |
細い通路を通って登っていきます |
テーベ川を望む |
サン・ピエトロ大聖堂 |
朝早くから美術館巡りでさすがに疲れたので、バスでホテルへ戻ります。
夕食はテルミニ駅近くで見つけたレストラン、Ristorante Donatiへ行きます。ここはツーリストメニューがあり、安くてフルコースが食べられるのでおすすめです。primo piatto は Spaghetti al ragù (とろ火で煮た肉汁をかけたスパゲッティ)
とPenne all'arrabbiata(怒りん坊のペンネ)、secondo piatto は Braciola di maiale con patate fritte (豚肉のブラッチオレ、フライドポテト添え) と Trippa alla romana (ローマ風内臓の煮込み)でした。
料理はいずれもなかなか繊細に作られていておいしかったです。ワインは店の名前の入ったハウスワインの赤でしたが、これも非常においしかったです。
Ristorante Donati |
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Spaghetti al ragù |
Penne-all'arrabbiata |
Braciola di maiale con patate fritte |
Trippa romana |
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3日目 コロッセオとフォロ・ロマーノ Colosseo e Foro romano
コロッセオも予約しておかないと入場に時間がかかります。13時前の予約だったので早い目に行きますが、どこでチケットに交換した良いのかよくわからず、聞き回ります。観光ボランティア(?)の人が結構いるので聞いてみると そこそこ英語でもいけるのですが、人によって言うことがちょっとずつ違うのはイタリアらしくてご愛敬です。チケットはすぐ受け取れ、予約者用の入り口に並びますが、安全検査のために結局かなり待ちました。待っている間にコロッセオの巨大な壁を十分に 見ることは出来ました。中へ入って上から見下ろすと、この巨大な建造物が2000年前に出来たとはにわかに信じられません。快晴の青空に映える競技場は壮大ですが、日向は焼け付くような暑さでした。
入場を待ちながら |
北西側から見たコロッセオ |
円形競技場 |
コロッセオから見たコンスタンティヌスの凱旋門 |
コロッセオを出てすぐ隣のフォロ・ロマーノ(Foro Romano)へ行きました。ここは紀元前6世紀頃から宗教、政治の中心地となった場所で、西ローマ帝国滅亡後は土砂の下に埋まり忘れ去られていました。 発掘は19世紀から始まりましたが、遺跡には色んな時代のものが混在しています。遺跡の南にあるパラティーノの丘(Còlle Palatino)から全体を見渡すことが出来ます。
パラティーノの丘から見たフォロ・ロマーノ |
アントニーノとファウスティナの神殿 Tempio di Antonino e Faustina |
ディオスクリの神殿 Tempio dei Dioscuri |
パラティーノの丘から見たコロッセオ |
2日目夜 サンタチェチーリア交響楽団演奏会 Orchestra dell’Accademia Nazionale di Santa Cecilia
ローマへの旅行を決めた時に、是非音楽会、特にローマ歌劇場でのオペラをみたかったのですが、残念ながら滞在した日には公演はありませんでした。もう一つ聞きたかったのがサンタ・チェチーリア管弦楽団です。
ちょうど、グスターヴォ・ドゥダメルの指揮でベートーベンの交響曲の演奏会があり、16日は4番と7番でした。コンサートがあるのは、サンタ・チェチーリア国立アカデミア Accademia Nazionale di Santa Cecilia のオーケストラの本拠地、
市の北の方にあるAuditorium Parco della Musica です。そこへ行くにはバスしかありません。案内所でバスの時間を聞いたら、なんとローマのバスは時刻表が無いのです。10分から15分間隔くらいで運行していると教えてくれました。
早い目にホテルを出てテルミニ駅前のバス乗り場で待ちますが、なかなか来ません。やっと来たバスは満員になり、車内アナウンスも無く、どこで降りて良いかもわかりません。Googleのストリートビューであらかじめ見ておいた、見覚えのある所に来たので
急いで下車しました。
Parco della Musica (音楽公園) は名前のとおり緑地の中にあります。ホールは近代的です。ネットで予約していたのでチケットを受け取ります。コンサートが始まって驚きました。素晴らしい音響のホールです。
それぞれの楽器が分離してきれいに聞こえるのですが、その音が全てまとまっています。日本のホールでは体験したことの無いような、ヨーロッパの響きをもつ素晴らしいホールで、予想に違わないドゥダメルの指揮での明るいベートーベンを聴くことが出来、最高でした。
演奏会が終わり、バス停でかなりの時間を待ってホテルへ帰り着くことが出来ました。ローマのバスの利用は、噂通り大変だと言うこともよくわかりました。
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