6月25日の朝9時20分、パリ オルリー空港発のAir France便でトゥールーズに向かいます。トゥールーズはスペインとの国境に位置するピレネー山脈の北に位置し、ピレネー山脈に発するガロンヌ川が街の中心を流れています。
私が初めてこの街を訪れたのは1976年6月2日で、その後、アマチュア無線の友人が多くいたこともありこの地方を2度訪問しています。
最後に訪れたのは1990年12月でしたので、今回はほぼ29年ぶりと言うことになります。食材が豊富なことから、食べ物がおいしくて住人達は優しいです。今回の旅行では地下鉄の中で若い人から席をゆづられたことが2度ありましたが、
フランスでは初体験でした。オック語の痕跡を残していると言われる独特の訛りのあるフランス語も優しくて懐かしいです。この街は紀元前のローマ時代から存在し、14世紀には貿易による利益で繁盛したという古い歴史を持っていますが、
現在はエアバス社(Airbus SE)を中心とした航空機産業でも著名です。 |
この40年間での市街中心部の変化
上の2枚の写真は1976年6月2日にキャピトル広場で撮影しました。広場の周囲には車が走るのはフランスでよく見られる光景です。 下が2019年6月26日に撮影した写真です。下の写真の右下部分、つまり、上の左側の写真を写した場所あたりに地下駐車場への入り口があり、広場には車が入れなくなっており、広々とした広場を散策することが出来ました。 |
サン・テチエンヌ広場も車が閉め出され、噴水が配置されてずいぶんすっきりしました。
この2枚の写真は街の中心部、rue de la Dalbadeのほとんど同じ場所で1976年と2019年に写した写真です。左側の建物は汚れを落としてきれいになっています。 それと、歩道が確保されて駐車の行儀もずいぶん良くなっているように思えました。今回の旅行で、イタリアも含めて、街の中心部に入る車を規制し、歩行者を優先している例を多く見ました。 トゥールーズもその方針で、空港まで伸びる路面電車(tram)や自動運転の地下鉄ができていました。観光地も歩行者優先に作り替える工事中の場所が多かったです。 |
Le Tramway de Toulouse |
Le Métro de Toulouse |
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街の中心部 Centre ville
さて、1時間余りのフライトでブラニャック空港(Aéroport Toulouse-Blagnac)に到着です。宿泊はアパート形式のホテルなので鍵の受け渡しをする必要がありますが、ずいぶん早く着いたので直接エージェントに向かいます。 路面電車から地下鉄に乗り換え、街の中心部まで行きますが、駅は新しくてエレベーターやエスカレーターが完備していて大きなスーツケースを持っていても平気です。キャピトル(Capitole)で地上に出ると大通りは歩行者天国です。エージェントはすぐに見つかり、 鍵を受け取って歩いてホテルへ行きます。冷房がないのが残念ですが、中庭に面した広い部屋で静かでした。とりあえず腹ごしらえを、とホテルのすぐ近くのレストラン”Le Genty Magre" に入ります。ここが大当たりで、非常においしくて安かったです。
エビのアイオリソース添え。エビが甘くておいしい。 |
子羊肉の煮込み |
食事を終えて街に出ると、さすがに暑いです。街の中心通りになるアルザス・ロレーヌ通り(rue d'Alsace-Lorraine)は人影もまばらですが、車が通らないというのは気持ちが良いです。暑さを避けながら歩いて シャルル・ドゴール公園へ向かいます。
アルザスロレーヌ通りとオーギュスタン博物館 rue dAlsace-Lorreine et Musée des Augustins |
シャルル・ドゴール公園は地下鉄のキャピトル駅を出たところにある緑豊かな小さな公園です。真ん中に噴水があり、子供達が中に入って遊んでいます。後ろの塔は監視塔として使われたドンジョン・デュ・キャピトル(Donjon du Cpitol)で、 今は市の観光案内所が入っており、キャピトルの裏側になります。
シャルル・ドゴール公園 Aquare de Charelles de Gaule |
この街のシンボルとも言えるのがキャピトルです。12世紀に建築が始まったこの建物は赤いレンガと白い石灰岩のコントラストが美しく、正面のCaunes-Minervois産大理石の8本の柱は当時トゥールーズが
8つの地区に分かれていたことの名残です。正面には "Capitulum" と書かれていますが、これはラングドック語でcapitol(市庁)の意味です。現在も市庁舎として使われていますが、建物の向かって右端にはキャピトル劇場
(Théâtre du Capitole Toulouse)が入っています。
キャピトル劇場は1818年に竣工した客席数1,156の劇場で、ヨーロッパでも有数のオペラ劇場となっています。オーケストラはトゥールーズキャピトル国立管弦楽団が担っています。6月25日にはここでジュール・マスネ(Jule Massenet)の
オペラ「ウェルテル(Werther)」公演があったので聴きに行きました。内部は規模が小さいながらも落ち着いた雰囲気で、古いヨーロッパの劇場独特の素晴らしい響きでした。演出は最近のオペラでありがちな奇をてらったような現代風ではなく、
時代考証に忠実なもので、落ち着いてみることが出来ました。
劇場入り口のマスネ「ウェルテル」のポスターと当日のプログラム |
ロビー |
ホール |
マスネ 「ウェルテル」 カーテンコール
オペラが終わった後、キャピトル広場に出るともう11時ですが日中の暑さも和らぎ、まだまだ大勢の人がそぞろ歩いていました。
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サン・セルナン大聖堂 Basylique Saint Sernin
街のどこからでもよく見える8角形をしたサン・セルナン大聖堂の鐘楼はトゥールーズのもう一つのシンボルです。1080年に建築が始まり、14世紀中期に完成したこの教会は、典型的なロマネスク様式の建物です。 キャピトルと同じくレンガの赤と石灰岩の白のコントラストが美しいです。中央広間(nef)の天井の高さは21mあり、広大な空間を創出しています。
rue du Taurから |
rue Saint-Bernardより |
八角形の鐘楼 |
正 面 |
ミエージュヴィル門(La porte Miègeville) 12世紀 |
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大広間 |
聖サツルナンの墓所 |
サン・ジャコブ教会 Église Les Saint Jacobs
聖セルナン大聖堂から南方向、ガロンヌ川の方へ歩くとレンガ造りの聖ジャコブ教会があります。1230年に建築が始まり、14世紀に完成した南フランスゴチック様式の建物で、ここにも8角形の鐘楼があります。 中央広間の28mの高さの天井は優美な7本の柱で支えられており、床は大理石で長方形の模様が描かれています。隣接する修道院の中庭もレンガ造りの建物を背景に、美しいです。 サンタントナンの礼拝堂(Chapelle St.Antonin)は14世紀半ばに葬儀のために建設されました。青を基調とした障壁画は中世オック語地域の芸術で、聖アントナンの伝説が描かれています。
中央広間(nef) |
ステンドグラス |
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修道院の中庭(Le Cloître du couvent) |
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聖アントナンの礼拝堂の障壁画(Les peinture de l'art médiéval occitan) |
聖ジャコブ教会からガロンヌ川まではすぐです。サン・ピエール橋のすぐそばに、ブリエンヌ運河(Canal de Brienne)の入り口があります。この運河は地中海につながるメディ運河(Canal du midi)に接続しており、そこまで見に行こうかと思いましたが、 あまりの暑さに諦めました。
ガロンヌ川とサン・ピエール橋 |
ブリエンヌ運河 |
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ヴィクトル・ユーゴ市場 Marché de Place Victor-Hugo
旅行先で市場を訪れるとその土地の食生活をうかがい知ることが出来ます。ヴィクトル・ユーゴ広場にある市場は月曜日以外、毎日開かれているトゥールーズで最も大きな市場で、全ての食材があります。 いつまでいても飽きることなく楽しめる場所です。
ハードタイプ専門のチーズ屋さん |
生ハム専門店 |
家禽類専門店。ウズラです。 |
家禽類専門店ではウサギも売っています、 ちょっとグロい・・・ |
臓物の専門店 |
魚屋には6月なのに牡蠣が並んでいます |
名前のわからない魚がいっぱい |
大きなカニ |
サンテティエンヌ大聖堂 Cathédrale Saint-Étienne
市の南にあるこの大聖堂は13世から17世紀にかけて建築されたレンガ造りで、様式はフランス南部ゴチック様式に北部ゴチックの様式が混じっています。この大聖堂の特徴は非対称な正面で、40年以上前に初めて見た時の 印象が残っていて懐かしかったです。鐘楼がありますが、この地方の特色である多角形ではなく、四角の塔です。ゴチック様式の内部は19mの幅があり、ロマネスク様式のサン・セルナン大聖堂よりかなり広く感じます。
祭壇 |
大聖堂の横側 |
エピローグ Épilogue
2日間の滞在の最後の夜は、やはりトゥールーズの名物料理、カスレ(Cassoulet)です。カスレは白インゲン豆とガチョウのコンフィ、ソーセージの煮込み料理で、 結構脂っこいので、私の中では冬の料理のイメージがあります。でも、せっかく来たので食べないわけにはいけません。最初の日の昼食を食べたレストラン、Le Genty-Magreへ行きました。期待通りのおいしさで、大満足でした。
オードブル |
カスレ Cassoulet |
今回の訪問は2泊3日という短い期間でしたが、43年ぶりの懐かしいトゥールーズを満喫することが出来ました。ただ残念だったのは、アマチュア無線のハンディー無線機、ICOMのID-51を持って行ったのですが、 D-Starデジタル・レピータ(中継局)に接続するのが難しく、交信できなかったことです。昔と比べると、アマチュア無線局の減少も影響していると思います。もう一度来られるかどうかはかなり微妙ですので、ちょっとさみしい思いも残しながら、 6月27日の朝の便でパリ、シャルル・ドゴール空港へ戻りました。
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